生産管理・ものづくりコラム vol.1

生産の技能や技術に偏りがちな現場での人材育成。しかし、課題解決力の向上なくして現場力の強化はありえません。今回は課題解決力を高め、人材を育成するポイントについてお伝えします。
課題解決力向上は現場力強化の要
生産マイスターを通じて、ものづくり人材の育成を支援している人材開発協会では、現場の育成ご責任者から、現場力が弱いという悩みをお聞きします。その場合、教育の大半は技能や技術の習得を主としたものです。
強い現場とは、全ての階層の社員がたゆまぬ改善に挑んでいる現場です。改善とは課題解決です。しかし、課題解決力はすぐには身につかず、階層に応じ、常に教育すべきものです。これは、ものづくり人材育成において小会が支援する主なテーマでもあります。現場の課題解決力向上において取り組むべき点を次に述べます。
踏まえるべき3つのプロセス(良質な経験)とOJT再考
課題解決力向上には、「インプット」「行動とアウトプット」「振り返り」というプロセスを踏まえること(【図表1】)と、OJTの質が重要な要素になります。
【図表1】 課題解決力向上のプロセス
①インプット
まずは知識のインプット、「知るべきを知る」です。必要な知識を知らなければ、課題に気づくことができません。現場での成果が出ないときには、インプットが疎かになっていることが考えられます。課題解決につながる適切な行動を取るため、その土台となる知識を、書籍やセミナー、通信教育などで学んでおくことが大切です。
②行動とアウトプット(成果)
インプットを行っても、期待するようなアウトプット(成果)に結びつかないことがありますが、この場合、インプットを活用した行動を取れていないことが多いようです。その理由は大きく2つあります。学んだ内容を使っていないか、忘れてしまっているかです。どちらもOJTで指導をしていただきたいところです。
③振り返り・気づき
実践し、得られたアウトプットが十分か否かを振り返り、その理由を考えることが重要です。十分か否かにかかわらず、振り返り、原因や今後の改善点を考えることで、教訓抽出ができ、結果、「得た知識が仕事で役立つ」実感を得られます。
上記のプロセスを確実に実践することで課題解決力の向上につながりますが、それに欠かせないのがOJTです。OJTの質によって、このプロセス実践の成否は左右されます。質の高いOJTに欠かせないのは、指導者の適切な関わり方です。プロセスの実践がうまくいかないときは、OJTを見直す必要があります。その手始めに、現在のOJTを【リスト1】の視点で確認してみてください。指導者自身で見直すだけでなく、周囲や上司の意見も聞いてみましょう。
【リスト1】OJTを見直すポイント
- 指導する内容は適切か(メンバーに変えてほしいこと、理解してほしいことについて過不足はないか)
- 指導するタイミングは適切か(メンバーが指導を受けとめやすいような場所や時間を考える)
- 指導における伝え方は適切か(メンバーのレベルや状況を踏まえた言葉の選び方や話し方をしているか)
- メンバーは行動変容したか(指導した内容に沿った行動が取れているかを確認する)
- 行動は定着したか(指導者が言わなくてもその行動が継続して取れているかを確認する)
外部も活用し人が育つ風土の醸成を
OJTを改善しても、思うように成果が出ないことがあります。その場合は、必要に応じて、外部の支援を受けることも効果的です。実務に精通し、現状を客観的に見られる外部指導者をOJTに参画させることにより、対象者・指導者ともに、実践力が高まります。また、社内のメンバーによる限られた知識や似たような経験をもとに、質の高い成果を出し続けるには限界が生じます。現状をレベルアップさせるにも、豊富な知識と経験を有する外部指導者の協力が役立ちます。
「生産マイスター」の学習で得た知識を、OJTで支えながら職場で形にする取り組みを積み重ねることで、一人ひとりが「学びの効果と成長」を実感するでしょう。その繰り返しによって、教育のゴールである“人が育つ風土の醸成”を実現し、現場力の強化にお役立ていただけることを願っています。
(執筆者)
玉野 晋三(たまの しんぞう)
一般社団法人人材開発協会 前専務理事
生産マイスター®は、上記のような管理・監督者に必要な原理原則を「役割」「コスト」「品質」「納期」「安全・環境」にわけて、それぞれ学べるように構成されている教育プログラムです。
製造部門の階層別教育プログラムとして、約500社にご導入頂いております。
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