マネジメントの基本理念について学ぶ

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1級(1)マネジメントの基本理念

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1級(1)マネジメントの基本理念

1級(1)「マネジメントの基本理念」

企業が存続し発展していくためには、さまざまな条件を必要とします。企業が利益を目的とする存在であることは言うまでもありません。

しかし、同時にさまざまな社会的規範の枠組みのなかで社会的機能を果たすことを要求され、分業組織のなかで統一ある行動を求められ、組織目的に制約されながら、その構成員である人を育成し、働きがいを与え続ける責務をもっています。

これらの諸条件や諸要因について本質的に理解し、そのあり方についての基本的な考え方を学ぶことは、経営幹部要員である管理者にとって不可欠であるといえるでしょう。

1. 管理者の位置づけと役割

強い企業とはどのような企業を指すのでしょうか。
経営環境が激しく変化するなかで、企業の強さとは何かを考えてみましょう。また、管理対象(部門)の経営責任者である管理者に求められることは何でしょうか。その役割について認識し、そのために要求される能力は何かを考えてみましょう。

1-1. 管理者の位置づけ

強い企業とはどのような企業を指すのでしょうか。

強い企業とは変化対応力がある企業で、外部や内部の環境変化を読み取り、迅速に対応できる会社こそが生き残る時代になっています。

1-2. 管理者の具体的な役割

管理者は現場の状況を知る第一人者であり、日々起こる問題に対応するだけでなく、管理対象の経営責任者として、将来を見すえた対応も必要です。

管理者は、部門の将来の「ありたい姿」を想定して革新的な課題を設定し、人と組織の成長による基盤を構築して、成果の最大化をめざした業務遂行により、業績という成果を達成することが求められています。

具体的には
・問題を発見し、改革・改善すること
・部門の業績責任を果たすこと
・組織のモチベーションを向上させること
・人材の育成を行うこと
などが挙げられます。

1-3. 管理者に求められる能力

管理者は、単に問題を解決するだけでなく、冷静に将来を見すえて目標や課題を設定し、情熱と責任感をもって組織全体で取り組むための動機づけや人材育成ができる能力が必要です。

具体的には
・将来や現状の環境変化を認識して、ありたい姿を設定し、実現のために必要な要素(技術や人など)について課題を設定する「課題設定能力」
・常に目標を設定し、意識し、メンバーへ目標を与え、その進捗を管理し、実績をフィードバックする「目標指向能力」
・明示した目標を達成するために、いつまでにどんなことを行うか、その方法を考え、示す「方法発見能力」
・適正な役割分担と、メンバーが働きやすい環境を整備する「組織能力」
・目標の提示に始まり、日常のコミュニケーションまで、常にメンバーに必要なことを的確に伝える「伝達能力」
・その時々のおかれている状況をもとに、メンバーがやる気を出すために何をすればよいかを考え、実行する「動機づけ能力」
・部下の能力を活かすことに加え、部下の能力を育成し、より大きな貢献を期待できるようにする「人間育成能力」
・部下の能力が向上すれば、自分の相対的な優位は下がるため、常に自己を高める「自己革新能力」
などが挙げられます。

生産管理に役立つ実践問題

1. 変化する経営環境のなかで、管理者に要求されていることについて説明しましょう。

2. 部門の経営者として、管理者が求められていることについて説明しましょう。

3. 管理者の具体的な役割を4つ挙げましょう。

4. 管理者に求めらえれる能力を8つ挙げましょう。

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2. 企業経営の目的・構造・業績

「もうかる会社ほど、社会がその貢献を評価している。」これは学者や評論家の意見だけでなく、明快な経営論理でもあります。このような企業位目的を達成する企業体は、経営基盤・経営機能・経営志向の三次元からなる構造体として形成されますが、そのあり方として個と全体との調和が非常に重要な考え方となっています。

業績は何に影響されて決まるのか、業績と経営力とはどのような関係にあるのかについて考えていきましょう。

2-1. 企業経営の目的と企業の社会的責任

企業経営の目的は、利潤を追求することです。利潤の追求と、社会的責任、社会への貢献、従業員に働きがいを与えることは矛盾しているものではありません。

2-2. 企業経営の三次元構造

企業経営体の三次元構造(経営「基盤」「機能」「指向」)を構成する各要素は、企業業績、効率経営、社会への貢献などを「全体」とする「個」の機能として位置づけられるものであり、「全体」と「個」が調和した状態でなければいけません。

2-3. 経営構造の原動力

企業経営体の三次元構造を動かす原動力となるものは、「経営に対する志向性」「組織へのモチベーションのはたらきかけ」「マネジメントサイクル管理力」の3つであり、これらが構造体の内側から企業を動かしています。

2-4. 企業業績と経営力

経営業績は必ずしも管理レベルで決まるものではありません。管理レベルが低くても業績の良い企業もあり、業績が必ずしも経営力のバロメーターとはなりません。本当の経営力とは、業績を変動させる外的条件の変化の影響度を最小限に抑えられる「総合経営力」をいいます。

生産管理に役立つ実践問題

1. 次の文章の【 】に適当な語句を当てはめましょう。
企業経営を直接的に支える3本の柱である「【①】」「【②】」「【③】」をさらに強化するためには、たゆまぬ研究開発と技術革新、遅れをとらない設備投資が必要になる。それを行うためには、【④】、【⑤】が前提となり、【⑥】の確保・補充も必要になる。
このような経営循環を保証するものが、企業利潤である。

2. 従業員の働きがいと企業業績は比例するというが、その理由は、企業が従業員に【⑦】と価値ある【⑧】を提供していけばいくほど、それは従業員の【⑨】につながり、企業業績につながるからである。

3. 経営基盤領域とは、企業という組織体とそれを運営するうえでの基本的な要素の分野をいい、「【⑩】」「【⑪】」「【⑫】」の3つに大きく分けられる。

4. 企業はその目的を達成するために組織化された人間の集団という意味で「企業は人なり」であるが、まずその企業や職場の【⑬】が人間をつくっていく。したがって、企業と人の関係は、「【⑭】が【⑮】をつくり、その⑮が⑭を支える」という関係と考える必要がある。

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3. 総合経営力とは何か

総合経営力とは、その経営管理レベルが「経営資産の蓄積度」「経営上の問題・課題の量と構成レベル」「組織体の活性化レベル」の3側面で決まるという考え方です。

経営資産の蓄積度については、8つのカテゴリーで説明し、経営上の問題・課題については、3つの問題と2つの課題に分けて説明しています。組織体の活性化レベルについては、組織開発(OD:Oraganization Development)で紹介されている内容を、わが国の経営の実態に即して解説しています。

総合経営力の3側面とみなさんの会社のレベルを対比しながら学習しましょう。

3-1. 経営資産の蓄積度

経営資産とは、長期的に経営の業績を維持し、さらに企業の拡大・充実を図るために蓄積された経営諸力であり、毎期の売上や利益という利子を生み出す源泉、経営活動の元本ともいうべきものです。

この経営資産がどれだけ蓄積されているかということが、総合経営力の決め手の1つとなります。

3-2. 経営上の問題・課題の量と構成レベル

経営における「問題」と「課題」は異なります。前者は「解決されなければならない不都合など」であり、後者は「レベルアップのための挑戦テーマ」です。

問題・課題にはそれぞれレベルがあり、企業内におけるこれらの問題と課題がどのようなレベルにあり、分布になっているかが、経営管理力の水準を示しています。

3-3. 組織体の活性化レベル

組織体が活性化されているとは、つぎのような状態をいいます。

①組織構成員がそれぞれ十分に能力を発揮している。
②事業特性に応じた問題・課題が、継続的に提起されている。
③組織体の連携・連動が実現されている。

上記3点の状態が実現されていることにより、つぎの2点も実現されていることをいいます。
④経営基盤の強化、経営成果の向上が、継続的に進んでいる。
⑤個人および組織体の経営力が、拡大再生産されている。

生産管理に役立つ実践問題

1. つぎの事項は、A営業資産、B製造技術資産、C製品技術資産、D管理技術資産のどれに当てはまるか答えましょう。
①活発な提案制度
②海外トップメーカーとの製造技術提携
③顧客情報収集ネットワーク
④画期的な技術による製品開発

2. 経営資産が経営の元本であり、企業利益は利子であるという理由を説明しましょう。

3. 下記の文章は「経営上の問題と課題の違い」についての説明です。【 】に当てはまる語句を答えましょう。
経営上の問題は、現実に起こっている【①】しなければならない事柄である。それに対し、経営上の課題とは、【②】をねらいとし、トップマネジメントの意思決定しだいによって決まる事柄である。

4. つぎの事項は、「課題」か「問題」のどちらに当てはまるのかを答えましょう。
①ユーザークレームが減らない
②新製品の開発(市場にない)
③既存市場への新規参入
④標準原価管理システムの導入

5. 組織体の連携・連動がうまくいっていないとどのような問題が生じるか、箇条書きで4点挙げましょう。

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4. 組織と機能

「組織は経営管理のツール(道具)である」と言われていますが、組織はむしろ生き物であり、道具を扱うように簡単にいくものではありません。

事業目的をふまえ、どうのような考え方で、どういう機能をもたせ、どのように人材を活用するかということは、経営にとって基本的で重要な問題です。これを間違えると、道具であるはずの組織に振り回され、経営上たいへんやっかいになります。

ここでは、組織をうまく運営していくためのポイントを明らかにし、手掛かりとして自社の組織を判断するつもりで学習に取り組んでいきましょう。

4-1. 組織の目的

組織のねらいは、目的達成に必要な機能を決め、まとめ方を決め、タテ・ヨコのつながりをつけ、効率的な運用ができるようなマトリクスを考え、人の育成の場をつくることです。

4-2. 組織と機能分担構造(組織形態)

日常運営組織の形態にもいろいろあり、その典型的なものは機能組織と事業部制組織ですが、事業形態によって向き・不向きがあり、それぞれ長所・短所・リスクを持っています。これらを理解して、欠点を押さえて運営するのが組織運営のコツといえます。

4-3. 組織とコミュニケーションネットワーク

組織階層は上下のコミュニケーションルートであり、分業構成はインテグレイトのコミュニケーションルートです。組織が一体的にうまく運営されるためには後者が大切になります。

4-4. 組織の責任と権限の枠組み

経営組織体の責任とは機能責任であり、権限は実質的権限です。この考え方をもって運営しなければ、組織は「言いわけ」「口実」「責任のなすりあい」の坩堝と化します。 組織は、公式組織でなく、非公式組織ともいうべき人脈ネットワークで動くものです。公式組織はこの非公式組織の裏打ちがないとうまく運営できません。

生産管理に役立つ実践問題

1. 以下の文章は「組織の目的」と「組織化の目的」との違いを説明したものです。【 】に当てはまる語句を答えましょう。

組織化する目的は、ある【①】についてプロジェクト組織を組むとか、【②】の推進をするなど多様である。組織の目的は、そうした【③】を遂行するために、分担とまとめをすることであり、かつ【④】の場をつくることにある。

2. 機能組織の長所と短所を3つずつ答えましょう。

3. つぎの文章のうち、正しいものを選びましょう。
①ベストの組織はありえない。
②権限を委譲したら責任もすべて移動する。
③インテグレイトのコミュニケーションは、ヨコのコミュニケーションをいう。
④「かんばん方式」は、ものの流れにともなうコミュニケーションにかかわる。

4. 以下の文章は「機能責任と分担責任の違い」について述べています。【 】に当てはまる語句を答えましょう。

組織における分業や分担の取決め、たとえば【①】で決められている業務分担事項について、その【②】をもつことが分担責任である。一方、企業がその【③】に対して本来期待しているはずの機能について、③がその②をもつことが【④】である。

5. 以下の文章は「形式的権限と実質的権限」について述べています。【 】に当てはまる語句を答えましょう。

形式的権限は、組織のなかで自分で【①】してよいと公式に認められている事項に対する決定権である。実質的権限とは、形式的権限があろうとなかろうと、【②】を動かし、【③】を動かし、【④】を動かす力をいう。

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5. 管理者と行動科学

管理者は、組織構成員の力を最大限に発揮させる責任があります。その方策がモチベーションを高めることであり、そのあり方を探る学問が行動科学です。

この行動科学は、アメリカで創始された学問なので、まずアメリカ的経営のなかでの行動科学の意味・位置づけを考えます。

また、日本の経営風土を行動科学の面から考えてみると、その良さを十分に活用しきっているとはいえない面が見受けられるので、わが国における経営行動のあり方を考え直してみましょう。

5-1. 行動科学についての考察

行動科学は、組織人に対する「はたらきかけ」とその影響プロセスと結果の因果関係を探り、望ましい結果をもたらす経営行動のあり方を探る学問です。

アメリカの行動科学では経営行動のパターンを4点挙げ、そのなかで「参画的集団参画型」がもっとも優れているとされています。

5-2. 日本の経営風土特性

日本の経営風土の特性として
①会社と自己の同一化と仕事への没頭
②年功序列型人事
③周囲の仕事への強い関心
④先進経営技術の積極的導入
などが挙げられます。

5-3. 日本における経営行動の考え方

行動科学の観点からみた日本の経営風土の特性として、
①全員の改善戦力化
②小グループによる活動の推進
③ボトムアップの重視
④機能責任意識の徹底
⑤実質的権限意識の徹底
⑥マネジメントサイクル管理の確立
が挙げられます。

いずれも経営にとってきわめて好都合な特性で、それらが日本の経営の良さを支えているといえるでしょう。

ただし、現段階ではその良さを活かしきれているとはいえませんし、さらにその裏面に潜んでいる問題も解決しきれているともいえません。

「企業は人なり」といわれますが、その前に「人をつくるのは企業」です。企業における人づくりを効率化するものが経営者および管理者の経営行動で、それは日本の経営風土特性をふまえたものでなければなりません。

5-4. 管理者としての特性

管理者適正とスペシャリスト適性の違いは、特性による差であり、能力の性質の違いです。どちらかが上とか下とかはいえません。

能力の伸びるタイプの条件とは、経験から学んでいける感受性です。この感受性の程度が、管理者としての命運を長い期間のなかで決めることになります。

生産管理に役立つ実践問題

1. 行動科学の考え方の特徴を挙げてみましょう。

2. 経営行動のパターンとして、「参画的集団参画型」が良いとされている理由を、箇条書きで3点挙げましょう。

3. アメリカの行動科学をそのままわが国に適用できない理由を説明しましょう。

4. 行動科学観点からみた日米の違いを3点挙げてみましょう。

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6. 管理者に求められる行動

環境変化が激しい状況で、管理者は、管理対象の経営責任者として、現在起きている問題だけでなく、将来を見すえた課題を想定し解決していくことが求められており、自部門だけでなく、会社や社会全体の最適なあり方についても考える必要があります。

また、日本だけでなくグローバルな視点で考えたり、事業継続のリスクを想定するなど、これまで以上に検討すべき範囲が広がっています。

6-1. 経営責任者として求められていること

管理者は、部門の経営責任者として、部門の将来を想像したり、上位方針を展開して課題を設定し、改革・改善することにより、業績を管理し目標達成する必要があります。

6-2_管理者の役割と行動

管理者は、改革・改善するための人材育成や動機づけによる組織の成長を図ることが必要となります。

6-3_管理者は将来を考えて行動する

将来を見すえた課題設定は、「ありたい姿」を構想し、課題を把握し、マイルストーンを設定して、解決していきます。また、「ありたい姿」はマクロ的な視点とミクロ的な視点のさまざまな角度から経営環境変化を想定して設定します。

日本の製造業は、グローバルな視点で戦略を考えなければ成立しないといえるほど、グローバルな対応は重要な位置づけとなっています。

顧客や取引先が多様化・グローバル化しており、調達・生産段階、供給・流通段階、使用段階などさまざまな場面でのリスクを想定し、対応する必要があります。

変化への対応で一番重要なことは、企業の「企業体質・組織体質」を強化することで、常に企業を良い方向に変えていこうとする意志と、問題を自ら発見し改善に導いていこうとする行動習慣、企業文化を強化するための行動を管理者が率先垂範する必要があります。

生産管理に役立つ実践問題

1. 管理者の役割である「問題を発見し、改革・改善する」ための行動を5つ挙げましょう。

2. 将来を見すえた課題設定について、管理者のとるべき行動について説明しましょう。

3. 環境変化を想定する場合、業績に影響を与える因子について、マクロ環境面、ミクロ環境面から挙げてみましょう。

4. 日本の製造業がグローバルな視点で戦略を考えなければいけない背景について説明してみましょう。

5. 「企業体質・組織体質」について説明してみましょう。

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