工場業績と原価管理について学ぶ

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1級(2)工業業績と原価管理

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1級(2)工業業績と原価管理

1級(2)「工業業績と原価管理」

原価管理というと、 標準原価や予算統制 のような計算システムと考えられがちですが、それらは 原価管理の一面 としての原価情報の提供システムにすぎません。

 原価管理の主体は、設計や製造のラインやスタッフの活動にあります。ここでは、このような考え方で、原価管理の真のあり方についておさらいします。

コストが決められていくプロセスを正しく認識し、その上に立って、標準原価を守っていくコストキーピングや、標準原価をさらに引き下げていくコストリダクションのための直接活動、すなわち、IE・QC・VE・PMといった活動をどのように方向づけ、どのような目標を設定し、その活動成果をコストという面からどのように測定し、評価するかについて学びます。

また、予算管理については、ライン部門、スタッフ部門を問わず、伝統的なやり方のなかに内在している問題点を、自分の会社に当てはめて検討し、その正しいあり方を認識しましょう。

1. 原価管理の構造

まず工場業績と原価管理の関係性についてつかみ、ついで、実際ロスと機会ロスに対応するコストキーピングとコストリダクションの方法的な違いを理解していきましょう。

実際ロスと機会ロスを排除するしくみが、コストマネジメントシステムです。このシステムは、原価管理情報システムと原価管理実際活動の2つの系列からなっています。中心は後者であり、前者は後者を情報面からサポートするものです。

また、コストはいきなり製造で発生するものではなく、その前に製品企画があり、設計があります。このようなコスト決定のプロセスとコストキーピング、コストリダクションの関係を学びましょう。

1-1. 工場業績と原価管理

全社売上・利益目標から工場実績目標が設定されます。その業績を管理することが原価管理の目的です。

原価上のロスには「実際ロス」と「機会ロス」があります。前者を管理するのが「コストキーピング」であり、後者を管理するのが「コストリダクション」です。この2つを区分する理由は、第1に概念が違うこと、第2に管理方法が違うこと、第3にロスのつかみ方が違うことによります。

1-2. コストマネジメントの構造

原価管理の実際活動と原価管理情報システムの2つが有機的に連携された構造が、コストマネジメントの構造です。原価管理の実際活動はラインとスタッフが一体となったコストキーピング、コストリダクションの活動であり、原価管理情報システムは、その実際活動を効率化したり、成果を測定・評価したりするための情報を提供するはたらきです。

コストマネジメント活動は、この原価管理システムのなかで、総合的なコスト改善活動推進技術として俯瞰的な全体最適の観点で運営するべきものです。

1-3. コストリダクションの構造

コストは、製品企画、設計、製造などというコストが作りこまれるプロセス、つまりコスト決定プロセスのなかで形成されます。したがって、それぞれの過程で管理されなければならないコストがあり、その流れのなかで源流からの管理が重要であり、かつ効率的です。

生産段階のコストリダクションの効率化のためには目標設定が必須であり、それが経営ニーズに応えうる活動を保証することになります。

生産管理に役立つ実践問題

1. 実際ロスと機会ロスの違いを説明しましょう。

2. 下記の文章は「コストキーピングとコストリダクションのつながり」について述べています。【 】に当てはまる語句を答えましょう。
決められた【①】については、それと【②】との差をなくすための管理、つまりコストキーピングがなされなければならない。しかし、その①は決して絶対的なものではないから、標準をより良いものに変えて①をダウンさせるコストリダクションが行われ、さらに新しい①を基準としたコストキーピングが進められていくというつながりになる。

3. 下記の文章は「コストマネジメントシステム」について述べています。【 】に当てはまる語句を述べましょう。
【① 】を設定し、①を維持し、さらにその①を改善する活動の組織的体系である。【②】と【③】の2つの系列から構成される。

4. 下記の文章は「何を解明する意義」について述べているものか答えましょう。
製品企画から製造に入るまでの製品の生成過程で、コストが実質的に形成されていくプロセスのことである。これを解明することによって、どの段階で、どんなコストを管理しなければならないかが明確になってくる。

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2. コストマネジメントとしての標準原価と予算管理

標準原価管理の中心は、標準による管理であり、実際ロスをなくすための現場での日常的な管理活動なしに標準原価計算システムをつくっても、ほとんど役に立ちません。

標準原価管理のための情報システムとしての標準原価計算は、標準さえ決めれたやれるというものではなく、それを実施するための条件が備わっていなければその機能を果たせません。

このような日常的な活動管理指標の成果と、原価計算による金額上の成果のつながりが確認できるシステムをつくることが大切です。

2-1. 概要

標準原価計算とは、「科学的、統計的調査に基づいて目標値を定めた原価」である標準原価と実際原価とを比較することができ、現状の原価ロスおよびコストマネジメント成果を把握・評価するものです。

2-2. 標準原価管理のあり方

標準原価計算は、コストマネジメント成果の金額評価システムで、組織単位ごとの成果を測定・評価するシステムとして位置づけられます。

標準原価計算が本当にコストマネジメントの評価尺度としての機能を果たせるようにするには、いくつかの条件と現場の日常的な管理をサポートするバックアップ体制の整備が必要です。

コストマネジメントの重点対象項目を決め、標準・実績のコントロールシステムをつくり、それを運営していくこと、および管理指標の成果と金額成果、つまり原価計算をつなげるしくみの構築が大切です。

2-3. 予算とその経営的機能

予算とは、時期の経営機能のアウトプットを決め、その達成に必要なインプットを決めたものです。予算の計画は予測精度によって異なり、予測精度が低ければ予算は1つの経営見通しにすぎません。

2-4. 予算管理と標準原価管理

上記の2つは本来は別物ですが、実際は一体的に運営されるため、標準原価管理(特に原価差異)がゆがめられています。2つの機能を正しくふまえた組み合わせが必要となります。

生産管理に役立つ実践問題

1. 下記は、標準原価管理を行う目的について述べたものです。【 】にあてはまる語句を述べましょう。
コストの【①】を目的とするものであり、【②】を見て【③】を調節することによって、求める結果を得ようとするものである。

2. 標準原価計算システムが対人責任原価計算の形態をとるべきであるという理由を述べてみましょう。

3.下記の【 】にあてはまる語句を答えましょう。
標準原価管理にはバックアップ体制の整備が必要だが、その理由は、「評価は【①】単位になされるが、この成果を左右する要因として、【②】、【③】、【④】、【⑤】、【⑥】などがあり、これらは専門スタッフに負うところが大きく、そのバックアップなしには、とうていやっていけない」からである。

4. 予算管理のなかで標準原価管理の機能が果たせなくなる場合がありますが、その場合と理由を述べた下記文章の【 】に当てはまる語句を述べましょう。
予算における予定原価は【①】および【②】を予測して決められるが、予測と実際はかなりのくい違いがあるため、【③】を【④】として使うと、標準実際差異が実際の数量、製品構成とかけ離れてしまうからである。

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3. 設計・生産準備段階のコストマネジメント

ここでは、コストマネジメントの最重要ポイントである設計・生産準備段階でのコストマネジメントについて説明していきます。

まず、設計段階でのコスト検討不足がロスを発生させ、それが事後的にいかに是正しにくいものであるかについて把握します。

そして、設計段階でのコスト検討が不十分となる原因を探ると設計部門の特性自体に起因するものが多いので、これらの要因をふまえ、設計段階におけるコストマネジメントの骨格がどういうものでなければならないかを理解することが必要です。

コストマネジメントのもうひとつのポイントは、生産段階にありますが、これは、ものの作り方、作る方法論を検討する段階であり、その決め方しだいで、生産段階に入ってからのコストが大きく左右されることになるからです。

3-1. 設計変更ロスとコスト面から見た設計部門の特性

設計変更ロスは大きく分けて「機会ロス」「設計変更にともなう埋没原価のロス」「設計変更にともなう不随ロス」「設計変更にともなう切替えロス」の4つがあります。これらのロスをなくすことが、設計段階のコストマネジメントのねらいになります。

設計変更ロスの発生原因は、設計部門の特性に由来するものが多いですが、それは、品質重視の傾向、技術者の職人化、経験技術がありながら組織資産化が遅れていること、コスト知識が乏しいことなどが挙げられます。これをふまえて、設計段階のコストマネジメントのあり方を考える必要があります。

3-2. 設計段階におけるコストマネジメント

設計段階のコストマネジメントシステムでは、生産設計基準、生産設計事例集、設計技術スキル基準などの設計データ体制の整備を図り、設計図面からコストを見積もる体制を設定することによって、生産設計やVEのためのデータ武装化を図ることが必要です。

この情報を活用して、設定された目標原価の達成をめざし、VEやVRPといった設計開発段階におけるコストリダクション手法を用い、コストマネジメントを行うことが重要です。

3-3. 生産準備段階のコストリダクション

「何を作るか」を決めるのが設計段階であり、「いかに作るか」を決めるのが生産準備段階で、この段階で生産段階に入ってからの「作り方によるコスト」を決めてしまいます。

生産準備段階でのコストリダクションは、生産担当工場の選定、内外作区分、設備コスト、経済工程の検討、専用治工具・金型のコストリダクションの検討など、ものの作り方の面が中心となります。

生産管理に役立つ実践問題

1. 以下の【 】に当てはまる語句を答えましょう。
コスト引下げ余地を含んだまま生産されてしまったロスを、【①】という。また、コスト引下げの方法はわかっているが、今やったのでは製品余命、改善のための投資額の関係で採算に合わないためにそれが実現できないのを、【②】という。

2. 「設計変更にともなう埋没原価のロス」の意味を説明しましょう。

3. 以下の文章は何について述べているか答えましょう。
個々人の経験を個々人だけのものにせず、これを公開して組織全体の経験とし、資産化することをいう。経験技術がものをいう分野では、その拡大・充実のスピードアップという意味でも重要である。

4. 以下の文章は、何の「留意点」について述べたものか答えましょう。
この種のチェックシートは膨大なものになるので、面倒で使われないおそれがある。その対策として、適用対象に応じたチェック項目の指定、重点指示などを管理者が適宜行うのがよい。

5. つぎの【 】に当てはまる語句を答えましょう。
【① 】は主に単一の製品のコストダウンを行うが、【②】は製品群または製品ファミリー全体のコストダウンをねらう手法である。

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4. 生産段階のコストリダクション

コストマネジメント活動を効率的に行い、活動成果を高めるには、改善によってコストがどのように動くのか、またはそれをどのように認識するのかについて、コスト把握の基本的な考え方を理解しておくことが重要です。

ここでは、各種の管理技法の活用によるコストリダクション成果を全体成果につなぎ、コストリダクション活動の効率化につなげていく考え方を学んでいきましょう。

4-1. コストリダクションとコスト変動の認識

方法、システムの変更がコストリダクションの基本ですが、これによるコストの動きは、差額原価と回避可能原価という形で表れます。これらを正しく把握し、最終成果に結びつけたり、効果を確認することが大切です。

4-2. 工数削減と効果

工数削減のテーマは多いですが、効果の把握はあいまいで、そのまま全体成果につながらない場合が多くみられます。その理由とそれをつなげるための施策、効果予想の方法は、いろいろなパターンによって異なります。

4-3. 品質に関するコストリダクション

品質に関するコストリダクションには、歩留りの改善、不良率の低減、工程削減の3つがあります。それぞれについてもいろいろな場合があり、その差額原価を慎重に検討する必要があります。

4-4. 生産計画とコストリダクション

生産計画の立て方がコストに与える影響の基本要因を決め、要因ごとにいくつかの選択肢を決め、コストが有利になる選定ロジックを決めておけば、与えられた条件のもとでのもっとも有利な生産計画とその場合のコストレベルをつかむことができます。

4-5. TPMとコストリダクション

TPM活動の基本は、現場の小集団での設備を対象とした改善活動であり、ねらいとして災害ゼロ、不良ゼロ、故障ゼロなど効率を阻害するあらゆるロス・ムダを徹底的に排除し、生産効率を極限まで高めていくと同時に、そこに働く人々の考え方、行動も変えていくことです。

生産管理に役立つ実践問題

1. コストリダクションによるコスト変動をつかむことがなぜ重要なのか、その理由を述べましょう。

2. 工数削減テーマが全体成果につながらない主な理由を述べてみましょう。

3. コストリダクションによる削減工数を生産増に振り向けられず、また残業削減、人員の配置転換等といった施策・効果が見込めない場合に考えられるコスト効果について述べてみましょう。

4. TPMの活動の「8本柱(活動)」を挙げましょう。

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