製造原価管理とコストダウンを学ぶ

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2級(2) 製造原価管理とコストダウン

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2級(2) 製造原価管理とコストダウン

2級(2)「製造原価管理とコストダウン」

1. 原価の成り立ち

1-1. 製造原価の構成

企業の経営活動は、資金の投下と回収により、「資金→製造→製品→販売→資金(投下資金+利益)」という流れになり、製品の製造は企業の内部取引となります。

原価とは製造原価のことをいい、その構成は材料費、労務費、経費の3つに大きく分かれます。

1-2. 正しい原価

材料費の低減は技術部門の努力範囲であり、製造部門では、原価に占める労務費の低減にその重要性があります。

コストダウンを考えるときには、実際原価と標準原価の2つの原価で比較してみることが必要です。

1-3. 標準原価管理

標準原価を用いて、実際に発生する原価のロスを管理する手法である「標準原価管理」について、理解しておきましょう。

1-4. コストダウン活動

コストダウンの方法には、コストリダクションとコストキーピングという2つの側面があります。それぞれを工場の各部門の役割に照らして考えてみましょう。

生産管理に役立つ実践問題

1. つぎの原価費目は、材料費(M)、労務費(L)、経費(O)のうち、いずれに分類されるか、記号で答えてみましょう。

①鋼材 ②外注加工費 ③減価償却費 ④電気料 ⑤棚卸減耗費 ⑥賃金 ⑦購入部品費 ⑧法定福利費 ⑨修繕費 ⑩塗料 ⑪賃借料 ⑫賞与手当

2. つぎの文章の【 】に適切な語句を当てはめてみましょう。

標準原価は、【①】が高い一定の水準にあるときにかかる【②】となる【③】である。それは【④】が改善などで変わらないとすれば、標準原価も変わることのない【⑤】を示す原価である。

【⑥】と【⑦】との差異は、なんらかのロスが発生していることを意味する。それは【⑧】を発揮すればロスを防ぐことのできる可能性をもっている。

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2. コストダウンのポイント

2-1. 生産性向上とコストダウン

・生産性とロス

生産性 メソッド
(製造方式)
パフォーマンス
(実施効率)
ユーティライゼーション
(経営資源の有効活用度)
現場で採用されるその製造方式自体の良し悪し 左記の方式に従って生産を進めるときの実施活動の効率 経営資源をいかに遊ばせずに有効的に活用するかの度合い
ロス メソッド面のロス パフォーマンス面のロス ユーティライゼーション面のロス

メソッドとは、生産の投入資源である3M(人、設備・機械、材料)、E(エネルギー)を組み合わせた具体的な仕事のしくみ(システム)を意味します。

メソッド(製造方式)の主な構成要因
構成要因 内容
使用する設備・機械 実際にその工場で使用される設備・機械自体(治工具などを含む)の有効度
使う側の技術力 上記採用された設備・機械の実際の使用にあたっての技術面での有効度(技術標準のレベル)
作業システム 人を中心とした、上記使用の設備・機械、使う側の技術力、そして材料を含めた作業システムの有効度

メソッド面における生産性の向上

技術面、期間および投資効果を総合的に考慮した、最適な製造システムの設計(メソッド改善)が必要です。

パフォーマンス

パフォーマンスとは、現場で採用された前記メソッドの実施時における効率(実施効率)のことで、標準と実績との比率で定量的に実現します。

この標準(時間)をものさしとして測定し、これを適正に維持していくための管理を「パフォーマンス管理」といいます。

2-2. メソッド面のロス

編成ロス

【内容】
ライン作業における各工程(作業者)間の作業量、すなわち作業時間のバランスがとれていないために発生するロス。

【分析(測定)手法】
直接時間観察法
PTS法(MTM、WF等)

ピッチダイアグラム

ラインバランシング

干渉ロス

【内容】
人-機械または複数人からなる連合作業において、作業量のアンバランス、作業者または機械相互のタイミングのズレなどのために発生するロス。

【分析(測定)手法】
直接時間観察法
PTS法(MTM、WF等)

M-Mチャート

受待ち台数の適正化
作業者間作業の平準化等

個別の作業方法改善(余地)

【内容】
設備、治工具、手順などの改善による個々の作業自体の改善余地

【分析(測定)手法】
ブレーンストーミングによる改善案の抽出
・改善の4原則
・動作経済の原則等

2-3. パフォーマンス面のロス

1. 作業標準の無視

作業標準とは、安全、品質、コストなどの諸条件を満足させ、もっとも経済的な方法として定められたものです。これが無視されていれば、パフォーマンスは下がることになります。

2. 遅い作業ペース

作業を構成している動作のスピードにムダのある動きや、スムーズでない動作などがあると、標準の作業ペースが守れないことになります。

3. 微少な作業中断によるロス

1日のなかで発生する、2分・3分といった理由のない微少な作業中断です。

4. 作業者責任の不良

指示ミス、設備不良といった管理・監督者責任による不良を除いた、作業者の不注意による不良のロス。

パフォーマンスを向上させるには
標準(時間)によるパフォーマンスの適正な管理が必要です。

2-4. 設備に関するコストダウンのポイント

【メソッド面】
使用設備の選択および設定技術標準の良否
・設備能力(大量化、高速化)、省力化、品質面での信頼度など、工場で採用される設備自体の有効度。
・設備を使用するにあたっての技術面での有効度、すなわち使用設備の設定技術(運転)標準の良否。

【パフォーマンス面】
設備運転上のロス
・採用された使用設備能力の実施効率(発揮度)
・設定技術(運転)標準の実施効率(遵守度)

2-5 その他のコストダウン

調達コストダウン

・買い方を変える
・作り方〃
・仕様〃
・調達政策〃

歩留りの向上

【メソッド面】
材料設計の有効度
・抜取り数増
・材料の活性化率向上
・VA・VEの手法

【パフォーマンス面】
設計歩留りの実施効率(達成度)
・作業ミスによる不良
・設備不調による不良
・素材不良、受入れミスなど

賃率の低減

・生産計画精度の向上による残業代、休日出勤手当の削減
・現場管理の徹底による欠勤率の低減

生産管理に役立つ実践問題

1. つぎの文章中の【 】に適切な語句を当てはめてみましょう。

生産性は現場で採用される生産の【①】そのものの良し悪しと、その方式に従って生産を進めるときの【②】の高低、また生産を行ううえで必要となる【③】を、いかに遊ばせず、【④】に行うか【⑤】によって決まることになります。

生産性の改善を考える場合、①、②、⑤を構成するそれぞれの要因によって、その改善のアプローチも異なります。

2. つぎの文章のうち、正しいものを1つ選びましょう。
①生産性は、高性能の設備の導入といった、いかにすぐれた製造方式を採用するかによって決まる。
②設備のパフォーマンスロスとは、設備トラブルによる停止をいい、この停止がなければこのロスは発生しない。
③作業ペースとは、作業を構成しているそれぞれの動作のスピードのことである。1つの動作からつぎの動作へのムダのないスムーズな動きなど、有効な速さが求められる。

3. 生産性向上以外のコストダウンの施策を3点挙げてみましょう。

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3. 改善マネジメントの進め方~労働生産性向上~

3-1. 労働生産性向上~メソッドの改善~

メソッド改善の第一歩は、改善の対象を明確にすることです。そのためには、5つの改善のレベルのうち、どれを対象にして進めるかを定める必要があります。 

改善レベルと流れ

レベル5:原材料の改善…原材料そのものを変更する。
レベル4:製品設計の改善…製品の形や仕様を変更する。
レベル3:工程の改善…工程を統合したり、順序を変えることにより、工程の排除や単純化を行う。
レベル2:作業の改善…設備や道具を利用したり、作業場の配置を替えることにより、作業を簡単・容易にする。
レベル1:動作の改善…手や足、からだの動きを少なくしたり、順序を変えたり、容易にする。

第一線監督者を中心として現場で行う改善は、レベル1からレベル3までが中心になります。改善効果を考えた場合、上位レベル(レベル5)から改善を始めるとよいとされています。それは、上位レベルの改善が実施されると、それに続く下位レベルも変更の対象となるからです。

メソッド改善の手順

メソッド改善の手順には、5つのステップがあります。
第1ステップ:改善の重点を発見し、目標を設定する。
第2ステップ:現在の方法を分析する。
第3ステップ:改善の着想を得る。
第4ステップ:具体案を作成する。
第5ステップ:具体案を実施し、定着化させる。

3-2. 改善の重点の発見と目標設定

目標には、3つの動きと、この働きを果たすための条件があります。これらを踏まえ、目標設定をする必要があります。

3-3. 現状分析の方法と改善案の作成

分析とは、ものごとの全体をよくつかむために、その中身を分解し、それを構成している成分・大きさや相互関係などを明らかにすることです。

改善案をつくる場合、いきなり、どのような案をつくるかということから考えなくてはなりません。実際に存在する事実を分析し、そのなかから問題を解決する糸口をつかむことが必要です。

現在の方法を知るための分析手法には、単位作業分析、要素作業分析、動作分析があります。

良い改善着想を得るには、2つの心構えと、2つの方法を確実に踏むことが必要です。

改善案がまとまったら、すぐ実施しようとは考えず、6項目について検討し、実施に移行することが大切です。

改善案を実施することは、簡単なようで大変難しいものです。実施のための条件をきちんと整備し、改善案の内容を関係者に徹底してから進めることがポイントです。

3-4. 労働生産性向上~パフォーマンス改善~

パフォーマンス改善の手順には6つの項目がありますが、その基本は、第一線監督者やリーダーによる教育訓練の徹底です。パフォーマンス実績を測定し、標準時間と対比させながら、パフォーマンスのムダを把握し、教育訓練を通じてこのムダの排除を図ります。

3-5. パフォーマンスの標準

標準時間とは、作業標準に時間という尺度を設けてつくられたものであり、パフォーマンスを測定するものさしとして使われます。

標準時間は、基本時間と余裕時間で構成されます。余裕とは、作業目的を果たすうえで必要な作業や行為のことですが、その発生が予測できないものです。

標準時間の設定方法には、経験見積り法、実績資料法、直接時間観測法、ワーク・サンプリング法、PTS法などがあります。

3-6 パフォーマンスの管理

パフォーマンスの管理とは、作業標準と作業ペースを決め、作業者に指示し、標準どおりの作業が行われたかどうかを確かめるために実績を把握し、実績に対する評価と分析を行い、思わしくない結果に対して対策を立て実施することです。

第一線監督者やリーダーが主役になり、作業指導を通じてパフォーマンスの向上と維持を図ろうとするものです。

生産管理に役立つ実践問題

1. つぎの文章の【 】に適切な語句を当てはめましょう。

現状分析の方法には、つぎの2つのことが大切である。
・【①】に、かつ【②】して、【③】に把握すること。
・【④】の原則を適用して、【⑤】の姿をつかむこと。

2. 改善着想を得るための、2つの心構えと、2つの方法について、それぞれ2点ずつ述べてみましょう。

①2つの心構え
②2つの方法

3. 改善案がまとまった段階で、改善案を検討するポイントを6項目挙げてみましょう。

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4. 改善マネジメントの進め方~設備生産性向上~

設備の生産性を高めるには、稼働する時間のうち、付加価値を生み出す時間の比率を高めることが重要です。

設備の生産性向上のための改善マネジメントについて、さらに詳しく勉強しておきましょう。

4-1. 設備生産性向上とは

生産現場では、いかに設備を上手に使ってより良い生産を行っていくかが問題であり、そのために、設備面での改善(設備生産性向上)を行っていくことが重要です。

設備生産性向上を行うにあたり、機械・設備がどれだけ有効に稼働したか定量的に表現する指標として、設備総合効率があります。

4-2. 設備総合効率管理

この管理の目的は、設備に関するロスを管理・改善し、設備生産性効率を最大化することです。

方法としては、日常的な監督・指導を行うことが、第一線監督者の重要な任務となります。また、時には設備パフォーマンスをあえて下げて配置人員を減らすといった臨機応変な対処も求められます。

生産管理に役立つ実践問題

1. つぎの【 】に適切な語句を当てはめましょう。

設備面での改善(設備生産性向上)では、【①】と【②】の2つの面からの改善が必要である。
これらの改善に対しての第一線監督者が行うべきことについては、①は、【③】と正常運転により、【④】を少なくすることであり、②については、現場に出て、現象をよく観察し、【⑤】、【⑥】することにより、ロスの発生原因を特定することである。

2. 設備総合効率の意味について説明してみましょう。

3. 次の文章の【 】に適切な語句を当てはめてみましょう。

設備総合効率を管理するにあたり、設備保全を強化して、【①】、段取り・調整作業の迅速化(シングル段取り)、【②】、チョコ停防止などといったロス取りを行うことも重要ですが、それだけでは十分ではなく、作業者の【③】や【④】、その他各種の要因により発生する場合が多く、このロスを防ぐためにも、日常的な監督・指導を行うことが、第一線監督者の重要な任務である。
また、ときには、計画された生産量が少ない場合は、【⑤】、【⑥】、という対策を講じる必要がある。

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