2級(3) 品質管理と不良低減の進め方

2級(3)「品質管理と不良低減の進め方」
日本企業が大きな成長をとげた理由のひとつに「生産する製品がの品質が良く、世界中の人々に喜んで買ってもらうことができた」という点が挙げられます。
このような日本製品の品質に対する高い評価は、短期間に築きあげられたものではなく、戦後まもなく入ってきた新しい品質の管理方法が、その後のQCサークル活動やZD運動などを通して、20年、30年を経て開花したものといえるでしょう。
しかし、一部企業の限られた製品の品質は良いといえるものの、まだ検討の余地はあるといえるでしょう。
第一線監督者の周辺には、日々、品質に関する問題が発生しています。不良や欠点によるトラブルのために、1日の大部分を費やしている監督者が多いのが現実です。
ここでの学習を通して、品質管理についての知識を深め、皆様の職場の品質向上に貢献していただければ幸いです。
1. 品質管理の概要
品質とは何か、良い品質を得るためのいろいろな活動について知識を深めましょう。そして、良い品質を製造現場で作りこんでいくために必要な品質条件、あるいは実質の測定、品質の維持管理や改善について理解しましょう。
第一線監督者の品質に対する理解と、現場におけるしっかりとした管理が、不良低減活動には不可欠です。
1-1. 製品と品質
製品にとって、品質(Q)は絶対条件です。QCDのうち、まず「Q」は最低限満足していなければなりません。
製品の品質を構成する要素を「品質特性」、顧客の要求や期待を意味する「真の特性」、企業が実際にものづくりを行うため企画や具体的な数値に落としこんだ「代用特性」といいます。
「品質の定義」はいくつか挙げられますが、ここでは「顧客の使用目的を果たすため、製品に備わっている性質(品質特性)が、顧客の要求や期待にどれだけ見合っているか」という定義を覚えておきましょう。
1-2. 品質向上のための活動
製品の品質を実現するための活動は、3つの段階(設計・製造・サービス)に分けることができます。各段階では、次工程はお客さまと考えて行動することが大切です。
良い製品を作り不良を発生させないためには、最初から正しいやり方で仕事を進めることが重要です。また、品質を向上させるためには、改善、維持(管理)、状況の測定の3つの活動を進めることが必要です。
1-3. 品質の「管理」活動
品質管理を行うために、管理サイクル(PDCAサイクル)とよばれる以下の4ステップを繰り返します。
①Plan:計画②Do:実施
③Check:検証
④Action:処置(改善)
仕事が、決められた計画、基準、または標準どおりに行われているかどうかを確認し、これから外れていれば修正処置をとり、決められたことを実施していくことが重要です。
また、さまざまな標準として「統計的品質管理(SQC)」「総合的品質管理(TQC)」、国際標準機構によるISO9000ファミリーなどがあり、製造部門としても積極的な取組が期待されます。
生産管理に役立つ実践問題
1.つぎの文章のうち、正しいものを選んでみましょう。
①Q、C、Dの3要素のうち、製品の絶対的条件として重要なものはCである。
②作業手順を間違えて不良を発生させた作業者に作業指導をして注意を促すことを、品質の改善活動という。
③製造品質は、これならお客さまに喜んで買ってもらえるだろうと考えて、工程内で作りこむ「ねらいの品質」である。
④自動車の「乗り心地がよい」ということはお客さまの考える品質で、真の品質特性である。
⑤管理サイクルとは、仕事の計画を立て、その計画を実施し、計画どおり実施されたかどうかを検証し、その修正処置をとり、これを繰り返すことである。
2. つぎの①~③の文章は、以下のA~Cのどの言葉を定義したものでしょうか。
①品質要求事項を満たすことに焦点を合わせた品質マネジメントの一部。
②お客さまに満足していただける品物を、もっとも安く早く作り、そして適切な時期に売るために、全社のあらゆる部門が協力し合い、計画、実施、検証、改善(PDCA)を行うこと。
③顧客の使用目的を果たすため、製品に備わっている性質(品質特性)が、顧客の要求や期待にどれだけ見合っているか。
A. 全社的に展開する品質管理
B. 品質
C.品質管理(JIS)
3. つぎの文章の【 】に当てはまる語句を述べてみましょう。
顧客から要求され期待されている性質を【①】といい、これらを具体的な【②】として設計し、製造しなければならない。
こうした具体的な②は品質の【③】とよばれており、最終的にものづくりの【④】に落としこまれる。
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2. 品質のための製造工程の管理
ここでは、実際の製造工程において、生産の4要素(4M)である「人」「設備」「材料」「作業方法」のそれぞれを適切に管理する必要性と、品質を製造工程で作りこんでいくために必要な指標について見直しておきましょう。
そして、実際に品質管理活動を進めていく際の第一線監督者の役割についても触れておきます。
2-1. 生産の4要素と品質
製造現場の役割は、生産の4要素を用いて、良い品質の製品を、より安く納期どおりに作ることにあります。
そのためには、「品質」「コスト」「納期」の3つのバランスを考慮して、4Mを適正に管理していくことが必要です。4Mのなかでも、とりわけ「人」の管理は重要であり、他の3Mの管理の源泉でもあります。
2-2. 製造工程における品質管理
品質は検査で決まるのではなく、あらかじめ品質を確保するための4Mの条件を標準化し、この作業標準を守ることにより、最初から製造工程で作りこんでいくことが大切です。
また、4Mの管理を適正に行いバラツキを小さくし、高度に管理することで工程能力を向上させることが必要です。
作業標準は、所定の製品品質と工数を維持するため4Mの条件を明確にしたものであり、製品の設計変更、改善による作業方法の変更など4Mの条件の変更があった場合は、すみやかに改定し、そのメンテナンスを行っていくことが必要です。
2-3. 第一線監督者による現場管理
第一線監督者は作業標準の重要性を理解し、4Mのバラツキが少ない職場を実現する必要があります。そのためには、作業標準書に基づく作業指導が必要です。それを行うポイントは、つぎのとおりです。
・作業者に作業標準を守らせる。
・作業標準を守れるよう、作業者のスキルを高める管理を行う。
・一人ひとりの気持ちを把握し、現場で適切な指導をする。
・スキルや作業内容を考慮した適切な人員配置を行う。
・品質意識をはじめとする作業者への動機づけ。
また、第一線監督者はこれらの役割を果たすことに加え、監督者としての誇りをもち、決められていることを守る維持活動だけではなく、職場の身近な問題について全員が積極的に改善意見を出し合い、より合理的な仕事を追求する職場づくりを行うことが期待されています。
生産管理に役立つ実践問題
1.つぎの文章のうち、正しいものを選びましょう。
①製造現場の役割は、より良い品質の製品を作ることであり、品質の向上がすべてといえる。
②生産の4Mとは、人・設備・材料・方法の頭文字をとったものである。
③品質は「検査」で決まり、品質の向上を図っていくためには、まず検査の強化が必要となる。
④一度決めた作業標準を変更することは、やっと慣れた作業者の混乱をまねくことになり、好ましくない。
2. つぎの文章の【 】のなかに適切な語句を当てはめましょう。
製造現場の役割は、生産の【①】、すなわち【②】、【③】、【④】、【⑤】を用いて、【⑥】の製品を、より【⑦】、【⑧】どおりに作ることにある。
そのためには、常に【⑨】、【⑩】、【⑪】の3つの【⑫】を考慮して、4Mを【⑬】に【⑭】していくことが必要である。
3. 品質の「管理」活動における第一線監督者の具体的な役割を4点挙げてみましょう。
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3. 工程における品質の改善と不良の低減
ここでは、現状の品質水準を向上させるための改善、すなわち不良低減の進め方について学習します。
また、検査中心の流出防止による管理という考え方と、検査のいらない作業を実現するために必要な、品質作りこみの考え方も理解し、改善を効果的に進めるため、事実を数量的につかむさまざまな品質管理の手法も理解しておきましょう。
3-1. 品質改善の進め方
品質のバラツキが少なく、安定した状態であっても、競合の品質改善が進んだり、顧客の品質に対する要求が高くなったりする場合などは、さらに現状の品質水準の向上が必要となります。これを品質の「改善」とよび、品質の「管理」と区別します。
「改善」は、つぎの手順に沿って行います。
①:改善の対象となる問題(特性)の把握
②:要因(原因)の抽出と主要因の特定(ウエイトづけ)
③:問題(特性)と要因(原因)の解析
④:対策の実施と検証(試行と定量評価による検証)
⑤:歯止め(標準化)
①でもっとも大きな問題を取り上げ、②においてすべての要因(原因)を抽出し、特に大きな影響を及ぼす要因を特定し、③で要因と不良現象との関係を解析します。④で結果をデータによって確認したうえで、⑤において見直し、教育訓練などの対策を実施します。
3-2. 流出防止による管理
検査は「製品の質を、あらかじめ定められている品質標準(規格値)に照らして測定し、適合しているかどうかを決定すること」です。
検査によって品質を保証するのではなく、検査のデータを分析して不良原因を追究し、「不良を作らない検査」や「検査のいらない作業」にすることが大切です。
検査には、不良除去(発見)予防、品質標準の管理などのさまざなま目的があります。検査の目的によって使い分けることが重要です。
「不良を作らない検査」の実現のためには、自主検査や順次点検を行うことが有効です。
3-3. 品質作りこみによる不良低減
「検査のいらない」作業を実現するためには、源流管理による品質の作りこみが必要です。
源流管理とは、製品の品質を作りこむために、ある工程で発生した問題を前工程にさかのぼって原因を掘り下げ、なるべく上流の階段から要因を発見、制御し、問題を解決していくことです。具体的には、設計、生産準備、製造の3つの段階の活動を理解する必要があります。
特に製造段階では、工程内の不良や品質不具合の発生に対し、原因を徹底して追求し、問題を発生させている「発生源」に対策のメスを入れることが必要です。また、4Mの基準そのものに問題があれば、基準を計画した段階に立ちかえって見直しを行い、作業標準を改訂します。
源流管理を強化するためには、製造現場として4Mの高度な管理状態を維持しておくことも必要です。
3-4. 品質管理の手法
製造段階において品質改善を効果的に進めるためには、数量的に事実をつかむ統計手法を活用することが重要です。
具体的には下記のような手法があります。
・パレート図:もっとも重要な問題を客観的、定量的に把握する。
・特性要因図:問題(特性)と要因(原因)の関係を明確にする。
・層別:データを分けて解析し、問題と特徴の傾向をつかむ。
・管理図:管理限界を設定し、データの傾向を統計的に管理する。
・その他の手法:「QCの7つの道具」とよばれる手法には、上記4種類の手法のほかに、「ヒストグラム」「チェックシート」「散布図(相関)」があります。
生産管理に役立つ実践問題
1. つぎの文章のうち、正しいものをひとつ選びましょう。
①品質の「管理」と「改善」は、同じ活動を意味する。
②品質の改善を進めるにあたっては、まず思いつくものから順に取り上げていくことが必要である。
③問題(特性)と要因(原因)の解析には、パレート図を用いる。
④正しい検査の考え方とは、検査で不良を見つけるため、より厳重に行うことであり、検査をなくすという考え方は誤っている。
⑤源流管理とは、設計、製造、市場の各段階において、ある工程で発生した問題を前工程にさかのぼって原因を掘り下げ、その影響を小さくする手立てを後工程で実施することである。
⑥管理図は、計量値または計数値により異なった管理図が用いられる。
2. つぎの文章の【 】に適切な語句を当てはめてみましょう。
品質の改善手順は、改善の対象となる【①】の把握、要因の抽出と主要因の特定(【②】)、問題と【③】の解析、【④】の実施と検証、【⑤】を行うことである。
3. つぎの文章は何を定義したものでしょうか。
①製品の質を、あらかじめ定められている品質標準(規格値)にてらして測定し、適合しているか否かを決定すること。
②データを作業者、機械、材料、製品別といった同じ共通点や特徴をもついくつかのグループに分けること。
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4. 品質と諸活動
品質を向上させると原価が上がる、能率を上げようとすると不良が増加するなど、さまざまな問題・疑問点について知識を深め、「品質と原価」「品質と能率」「不良と熟練」「不良とライン編成」などの関係を認識しましょう。
そのうえで、小集団による不良低減の進め方を理解し、教育・訓練の重要性についても復習します。それらを効率よく実施するための重点などについても理解を深めます。
そして、ISO9001に代表される全社的な品質管理システムの概要を理解し、品質保証の高度化についての潮流を確認しておきましょう。
4-1. 品質と原価
品質に関係して発生する費用は、失敗コスト、評価コスト、予防コストの3つに分類されます。特に失敗コストの占める比率が高いため、その低減が重点になります。製造現場としては不良や手直しを撲滅するため、最初から正しい作業を行い、不良を作らないことが重要です。
品質コストに関するPAFアプローチは、評価コスト・予防コストの増加を目標限度に抑えこみつつ失敗コストを低減させ、高い品質を実現しながら総コストの低減を行うことをねらうものです。源流段階からの品質作りこみを進め、検査の不要な作業を行うことがPAFアプローチを進めることにもなります。
設計品質と原価の理解についてはVE、製造品質と原価についてはEEの考え方も重要です。
4-2. 品質と能率
不良発生により能率が下がることはあっても、能率よく仕事をすることで不良が増えるという関係はありません。作業能率の高い人ほど、品質も良いことが多いものです。急ぐから不良が出てもやむを得ないなど、甘い考えは捨てることです。そのためには、発生した不良について発生原因と責任者(責任部署)を明確にすることが重要です。
現場では、作業標準の遵守が必要です。第一線監督者は仕事のポイントを押さえた作業指導を行うことで作業標準の遵守を実現し、不良なく効率的な作業を行います。また、不良が発生するとラインバランスが崩れ、能率が悪くなることを認識しておく必要があります。
4-3. 小集団活動による不良低減
現場の全員が参画し、現場の問題解決を行うことが重要です。
小集団活動は、その性格により以下の2つに分類されます。
・同じ職場内での全員参加による自主的な活動
・トップまたは管理者の指示に基づく、職制を中心とする活動
特に前者の自主的な活動を進めるにあたっては、自分たちに共通する身近な問題をテーマとして設定し、自主性・相互啓発を重視した進め方で全員参加の活動を実現することが必要です。
4-4. 教育・訓練の重要性
製造現場の役割に応じ、教育訓練も2つの観点で進めることが必要です。
・作業標準を遵守するための教育訓練
・品質改善のための教育訓練
作業標準を遵守するための教育訓練は、「作業標準そのものの理解、標準を守ることの大切さの理解、標準の実施訓練」であり、これらは第一線監督者が主体となって取り組むべき指導事項を多く含んでいます。
品質改善のための教育訓練は、「品質改善スキルと改善実践力」から構成されますが、品質改善スキルは、「問題発見力・原因追及力・対策立案力」から成り立っていることを理解し、部下の指導にあたります。改善実践力はOJTによって高めることが効果的です。
4-5. ISO9001と品質マネジメントシステム
高度化する顧客要求に応えるために、期待する成果は正しいプロセスから生まれるという考え方に基づき、品質マネジメントの原則による品質マネジメントシステムを構築することが重要です。
PL法(製造物責任法)への対応として、製品の出発点である商品企画から使用者に使用されて廃棄に至るまでの製品の品質と安全性に注意する必要があり、その際には複数の部門の連絡活動が特に重要になります。
品質保証の高度化に向け、営業・設計・購買・製造・アフターサービス部門が一体となった全社的な品質保証体制の構築が求められます。製造部門・製造現場としても以下の3つのことを検討していく必要があります。
①より高度な品質目標の設定と実現
②〃部門間連携、職場連携の確立
③〃品質知識・品質意識の向上
生産管理に役立つ実践問題
1. つぎの文章を読んで、正しいものには〇を、誤っているものには×をつけましょう。
①品質コストのうち、一般に一番多くかかっているものは評価コストであり、統計的手法の活用で、検査費用の低減を図らなければならない。
②失敗コストのうち、社内で発生するものは検査の見直しで、社外で発生するものは第一線管理者の努力で低減できるものが多い。
③「能率を向上させて生産を多くすると、不良が増える」など、品質管理と能率管理を両立させることはできない。
④作業者の努力や注意で対応できない不良もあるため、不良の発生状況だけでなく、発生原因の責任を明確にする必要がある。
⑤小集団活動においては、対象の製品にかかわる各工程を担当する職場から、個性や知識、経験の異なる人々が集まり検討を行うことで相乗効果が期待できる。
⑥作業標準の遵守のためには、作業標準種を用いて作業の手順や意味合い、品質・安全面で注意すべき事項を理解させることが第一歩である。
⑦ベテランがもつ知識や技能を棚卸しするには、文書化は行わず、具体的な事例をOJTの場面で担当者が聞き出しておけば十分である。
⑧品質改善スキルとは、原因発見力と対策追及力と現場展開力という3つの力(要素)が組み合わさったものである。
⑨ISO9001:2000は、製品・サービスを提供するにあたり、法的要求事項などを勘案し、生産・製造工程(サービス業では当該サービスの提供過程)で、求められている品質を確実に作りこむ(提供する)ことを要求しているマネジメントシステム規格である。
⑩ISOは、「期待する品質は正しい検査から生まれる」という考え方を基本としている。
2. つぎの文章の【 】のなかに適当な語句を当てはめましょう。
PAFアプローチによる品質のコストの管理は、効果的に【①】コスト、【②】コストを活用することで【③】コストを低減し、結果的に【④】の品質コストを下げることをねらう。
具体的には、【⑤】管理による品質の作りこみを進め、【⑥】のいらない作業を実現することで、⑥という②コストをおさえこむことが重要である。
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