3級(1) 生産部門におけるリーダーの役割

3級(1)「生産部門におけるリーダーの役割」
「正しい仕事とは何か」「現在行うべき仕事とは何か」を常に追求し、それを標準化して、その標準を正しく守るための管理の考え方を身につけることを「スタンダード・マインド」と呼んでいます。
ここでは、生産のしくみと管理の基本的な考え方、職場改善の定石、職場のなかの人間関係について学び、リーダーとして自信をもって行動できる心がまえや基礎知識を身につけていきます。
1. リーダーの役割
生産活動において大切なことは、他社の製品に比べて「より良く(Q)、より安く(C)、ほしいときにすぐ(D)」生産することです。
そのために必要なリーダーの役割や管理のやり方などについて、生産マイスター検定で学習した内容をもう一度おさらいしておきましょう。
1-1. リーダーの役割と能力
現場リーダーの役割は、自職場の人・設備・原材料・作業方法(4M)を管理し、QCDをレベルアップさせることです。
1-2. リーダーのための管理の基本
管理には、「維持管理」と「改善管理」があります。
「維持管理」とは、標準と実績の差を問題としてとらえ、ムダを現象させる活動です。
「改善管理」とは、目標(あるべき姿)と標準の差を課題としてとらえ、改善を推進する活動です。
管理で大切なことは、管理のサイクル(PDCA)を回す習慣をつけることです。
PDCAを回すポイントは、以下のとおりです。
P:目的・目標を明確にする。
D:メンバーと事前に目的・目標を共有し、実行度を向上させる。
C:計画した目標と行動の両方について振り返りを行う。
A:できなかったことについて、「応急策」と「恒久策」を立案する。
生産管理に役立つ実践問題
1. 4Mとは何か、4Mの意味について説明しましょう。
2. 維持管理について説明しましょう。
3. 改善管理について説明しましょう。
4. 管理のサイクルPDCAについて説明しましょう。
5. 計画(Plan)の際の目標について、「良い目標」の要点を説明しましょう。
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2. 企業と生産活動
私たちの企業は、だれのために、何のために存在するのでしょうか。また、企業活動のなかで、もっとも大事な「ものづくり」、すなわち「生産」や「製造」とは、どのような機能をもっているのでしょうか。
生産マイスター検定で学習した、社会における企業の使命、企業システム、そして生産システムなどの概要についてもういちどおさらいしていきましょう。
2-1. 企業の目的とその責任
私たちが物質的にも精神的にも生活の豊かさを追求し続けるためには、製品やサービスの形で豊かさを提供する企業が存続し、発展することが必要です。
企業にとっては、地域社会と共生することも必要です。社会貢献をとおして生活の豊かさを保つことが、企業の社会的責任です。
企業が存続し発展するためには、利益を上げることが必要です。利益を上げるためには、利益の源泉である付加価値を増大させる必要があります。
2-2. 企業の仕組みを理解する
効率の良い企業とは、一定の産出物(同一の付加価値)を、より少ない投入物で生み出す企業をいいます。
2-3. 生産活動に期待されるもの
生産で大切なことは、より良く、より安く、ほしいときにすぐ、というものづくりをすることであり、さらに安全や環境へ配慮することも重要です。
材料から製品に変化していく流れを「工程」とよび、人や機械が品物にはたらきかける機能を「作業」とよびます。
生産の構造(しくみ)は、「工程」と「作業」が網目となった構造となっており、相互に密接な関係をもっています。
改善活動にあたっては、工程機能と作業機能とは相互に対立することがあります。
生産管理に役立つ実践問題
1. 付加価値の意味を述べてみましょう。
2. 一般に生産の効率化といわれますが、「効率化」の意味を述べてみましょう。
3. 生産、ものづくりでもっとも大切な基本について説明しましょう。
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3. 優れたリーダーの基本スキル
ここでいうリーダーとは、一般に会社で「ライン長」、「グループ長」といわれている人たちで、時代を担う第一線監督者の候補者に成長を期待されている方々です。
優れたリーダーになるために期待されている職務と、その職務を果たすためにリーダーに求められる能力についておさらいしましょう。
3-1. リーダーシップを発揮するには
リーダーシップとは、リーダーの言うことをメンバーに「なるほど」と納得してもらえることです。
リーダーシップの発揮にあたっては、話し方技法、ミーティングを上手に進める技法、教え方の技法、改善の技法を身につけることが大切です。
リーダーは、好かれることも大切です。そのためには、積極的傾聴を身につけ、聞き上手になりましょう。
3-2. 作業指導の進め方
リーダーに期待されるもっとも大事な仕事は、作業者の技能向上のための作業指導です。
作業指導では、その仕事の重要性を理解させ、使用する設備や構成部品、材料、治工具、作業手順などについて理解させることが必要です。
作業指導を行うための計画の手順は
・技能棚卸表をつくる。
・各人の技能を技能棚卸表として、訓練すべき項目を決める。
・訓練計画表を立案する。
・作業指導を実施する。
・自己管理カードによってフォローする。
といった例が挙げられます。
3-3. ミーティングの上手な進め方
ミーティングとは、職場のメンバーが同じ場所に集まって顔を合わせながら、自分の知っていることや意見を出し合い、みんなで結論をまとめることです。そのために、リーダーは上手なミーティングの進め方を知っておく必要があります。
ミーティングを上手に進めるポイントは
・ミーティングの目的をはっきりさせる。
・ミーティングのための準備をする。
・テーマは身近なもの、消化しやすいものを選ぶ。
・テーマ・日程・時間は早めにメンバーに連絡しておく。
・メンバー全員で役割を分担する。
・リーダーは話題のきっかけや突破口をつくる。
・質問に答えやすいように、考える時間を与える。
・ミーティングで出された意見は、どんどん書き出す。
・結論をまとめる。
・今回のミーティングの締めくくりをし、次回の計画を立てる。
といったポイントが挙げられます。
また、ミーティングにおいてリーダーが注意すべき点は、
・専門家になりすぎないこと。
・リーダーの考えに、メンバーを無理に同意させないこと。
・メンバーが理解できないような話をしないこと。
・リーダーが1人でしゃべりすぎないこと。
・ミーティングに遅れないこと(特にリーダーはメンバーより先に出席すること)
・怒っている姿を見せないこと。
といったことが挙げられます。
生産管理に役立つ実践問題
1. 作業指導を行うための計画の手順を5項目に分けて挙げてみましょう。
2. ミーティングを上手に進めるポイントを5つ挙げてみましょう。
3. ミーティングでリーダーが注意すべき点を3点挙げてみましょう。
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4. 生産革新の定石
生産マイスター検定では、企業が存続し続けるためには、どのような課題に挑戦しなければならないか、また優れた企業になるための条件として職場の改善をどのように進めるべきかなどについて学習しました。
生産の革新には、守るべき基本的な手順があります。革新を進めるためには、「一見、当たり前と思われる基本的事項を確実に実行することの大切さ」を理解しておきましょう。
4-1. 優れた職場にするために
企業が永続的に存続し続けるためには、環境変化に柔軟に対応していかなければなりません。環境変化に強い企業こそ優れた企業です。
環境変化に柔軟に対応するには、変化に強い体質をつくっておく必要があります。製造現場において変化を起こすには、生産革新が欠かせません。
私たちの職場には、常に解決すべき2つの課題があります。1つは生産活動の効率化を追求することであり、もう1つは職場で働く人々の仕事に対する充実感を満足させることです。
4-2. 職場改善の定石
改善活動は、「より良く、より安く、ほしいときにすぐ」製品をつくるために、定石どおり着実に一歩一歩進めることが大切です。
4-3. 5Sは管理の原点
改善活動は、「決められたことを確実に守る」という習慣をつけることにあります。
4-4. 職場改善と小集団活動
職場改善の進め方には、大きく2つのアプローチがあります。その1つは管理者・スタッフを中心とした改革活動であり、もう1つは小集団活動を中心とした職場内の改善と職場の活性化を目的とした活動です。
生産管理に役立つ実践問題
1. 職場で要求される2つの課題を述べてみましょう。
2. 優れた職場にするための条件とはどのようなものでしょうか。3点挙げてみましょう。
3. なぜ5Sは必要なのか、5Sの目的について説明してみましょう。
4. 整頓とは何か、整頓の意味について説明してみましょう。
5. 小集団活動は何のために行う活動か、簡潔に説明してみましょう。
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5. 活気のある職場づくり
現代の生産活動は、先端技術の進展にともないメカトロニクスなどの導入で生産システムが大きく変化し、「仕事の効率化と仕事に対する充実感、働く喜び」をいかに調和させていくかという課題に挑戦しなければなりません。
生産マイスター検定の学習において、事例を中心として職場のなかの人間関係、人が意欲的に物事に取り組む要素について、行動科学の側面から考えてきましたが、もういちど概要をおさらいしておきましょう。
5-1. リーダーのための行動科学
メイヨーが行ったホーソン工場実験は、テイラーが提唱した科学的管理の哲学を修正し、人間の行動科学を生み出すきっかけをつくりました。企業の生産性に影響を与えるのは人間の感情であり、感情を無視した合理主義は、生産性向上につながりません。
5-2. やる気が行動を決める
人のやる気を高めるには、マズローの提唱した欲求の5段階説やハーズバーグが提唱した動機付け要因・衛生要因が参考になります。一人ひとりが価値のある仕事をしている、仕事をつうじて成長していることを認識させることが重要です。
リーダーは、メンバーの知力をさらに有効に活用する方法を考えることが必要です。行動科学は、働く人々の力を最大限に発揮させ、業績を上げていくうえで役立ちます。
リーダーは、個人個人の欲求を知り、欲求を刺激するように指導することが必要です。このためにも、リーダーは個人個人とのコミュニケーションを良くし、メンバーの心を知ることが大切です。
5-3. 活気のある職場づくり
改善活動においては、改善の方法論を知ることだけでなく、常に変わろうとする意識づけも大切です。
生産管理に役立つ実践問題
1. アブラハム・マズローの欲求の5段階を挙げてみましょう。
2. メンバーの「やる気」を引き出すために、リーダーは何をすべきかについて説明してみましょう。
3.あなた自身が仕事に対する充実感を持つためにはどうすべきかについて述べてみましょう。
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さらなるランクアップのために

2級では、第一線監督者として活躍するために必要な生産の専門知識と人の動かし方を学ぶことができます。
活躍の場をさらに拡げるために、ぜひ挑戦をしてみてください。


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