製造原価の成り立ちとその低減方法を学ぶ

  1. TOP
  2. 生産管理topic
  3. 生産管理ワードおさらい・実践問題 3級
  4. 3級(2) 製造原価の成り立ちとその低減方法

3級(2) 製造原価の成り立ちとその低減方法

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
3級(2) 製造原価の成り立ちとその低減方法

3級(2)「製造原価の成り立ちとその低減方法」

ここでは、製品をより安く作るということを中心に学習します。具体的には、原価低減の必要性と原価低減におけるリーダーの役割を理解し、その役割を果たすためのメソッド(作業方式)の改善技術とパフォーマンス(作業実施効率)の改善技術について学んでいきます。

1. 原価管理の必要性とリーダーの役割

生産活動でもっとも大切なものは、「より良く、より安く、ほしいときにすぐ」製品を作ること、すなわち、品質、原価(コスト)、納期の3つがものづくりの基本ということを生産マイスター検定の学習で学びました。

では、原価を低減するためにはどのようなことを考えておく必要があったでしょうか。 原価に関する基本的な知識をおさらいし、職場で発生している原価のムダを見直し、原価管理の必要性と方法、原価低減のためのリーダーの役割をもういちど確認しておきましょう。

1-1. 原価の構成と計算の目的

原価とは、製品を作る過程で消費される価値のことです。

原価を構成している費目は、材料費、労務費、経費で、これを原価の3要素といいます。

原価は、直接材料費、直接労務費、製造間接費にも区分できます。この3つを加えたものが製造原価です。

原価計算をする目的は、①利益を計算すること、②原価のムダをなくすことです。

1-2. 原価管理の必要性とその方法

社会が必要とする製品を安く豊富に作り、社会に役立つという目的を果たすには、①開発力(社会が必要とする製品を開発する力)、②製造力(良い製品を安く、納期どおり作る力)、③販売力(作った製品を多く売る力)という3つの力が必要です。

良い製品を作りあげ、その価値が認められたとき、その見返りとして得られるものが売上高であり利益です。利益は、①働く人の生活基盤の安定、②会社経営の資金を集める力の向上という2つの働きをします。利益を上げるためには、原価を管理し、努力して原価のムダをなくさなければなりません。

1-3. 原価低減とリーダーの役割

原価低減のために、リーダーには、①不良品を作らない、②作業標準を守り、守らせる、③資材や消耗品の使用量標準を守り、守らせる、④改善活動を企画・推進する、という4つの役割が期待されています。このためには、原価意識をもって原価のムダを発見し、努力してムダをなくさなければなりません。

改善を進めるための基本態度として、①旺盛な問題意識をもつ、②「気力」と「執念」をもつ、③常に事実に基づいて考え判断する、④目的を直視して徹底的に考える、⑤既成概念を捨てて新しい考え方、見方を追求することを心がける必要があります。

生産管理に役立つ実践問題

1. つぎの文章の【 】のなかに適切な語句当てはめましょう。

・【①】、【②】、【③】を原価(製造原価)の3要素と呼ぶ。

・原価(製造原価)を直接費と間接費という別の分け方でとらえると、直接費は【④】、【⑤】、【⑥】に区分することもできる。

2. 社会に役立つ製品づくりに必要な3つの力を説明してみましょう。

3. 利益を上げる2つの方法を説明してみましょう。

4. 原価低減のためにリーダーに期待されている4つの役割について述べてみましょう。

解答はこちら

web会員登録が必要です(無料)

2. 労働生産性向上の進め方

原価低減を図るために、より早く効率的に仕事をすることが求められます。そのために、日々の仕事のなかにどのようなロスがあるかを把握し、そのロスを常に改善していくことが求められています。

生産マイスター検定では、原価低減を図るための基本的な考え方の1つである労働生産性の向上についての基本的な知識を理解し、労働生産性を上げる手法の1つであるIEについても学習しました。

上記の内容に加え、改善を考える際の改善発想技術とムダの改善方法についても、もう一度おさらいしておきましょう。

2-1. 労働生産性関連用語おさらい

生産性とは、「産出量(アウトプット)/投入量(インプット)」と定義されます。

IEとは、人間の仕事に対して科学的な検討を加え、人間の動きのムダを取り除き人間の能力を高める技法です。

メソッドエンジニアリング(ME)とは、仕事のやり方を研究することで、楽に、早く、多くのものを、安全に生産するための作業方法や製造工程を作り出すことです。

ワークメジャメント(WM)とは、仕事とその時間を測定することによって管理目標を達成することです。

メソッドのロスとは、作業目的を果たすための作業方法が不十分なために生じるムダのことです。

パフォーマンスのロスとは、監督者やリーダーの作業者に対する作業指導不足や、作業者自身の作業に対する技能と努力不足により生じるムダのことです。

ユーティライゼーションのロスとは、監督者やリーダーによる指示不足や設備の準備・調整により生じる生産できないムダのことです。

2-2. 改善発想技術とは

改善案を考える技術として、5W1H法、ECRS法(排除、結合、入替え、単純化)、動作経済の原則があります。

アイデア発想には、ブレーンストーミングが有効です。

2-3. ムダの改善方法

メソッドロスの改善とは、作業のやり方のまずさから発生するムダをなくすことです。工程系列、作業者・設備系列、動作系列の改善対象があります。

パフォーマンスは、作業に対する作業者の努力、作業に対する技能、働く職場の作業環境によって左右されます。これらの要因をより良くして、ムダをなくすことがパフォーマンスロスの改善です。

ユーティライゼーションロスの改善は、生産できない時間を減らすことです。具体的には、生産計画の見直しや作業者への指示・指導の明確化、準備段取り時間の短縮などです。

生産管理に役立つ実践問題

1. 生産性の計算式とIEの定義を述べてみましょう。

2. メソッドエンジニアリング(ME)とワークメジャメント(WM)について述べてみましょう。

3. 人の動きを妨げる3つのロスについて述べてみましょう。

①メソッドロス
②パフォーマンスロス
③ユーティライゼーションロス

4. ブレーンストーミングの4つの原則を述べてみましょう。

解答はこちら

web会員登録が必要です(無料)

3. 方法研究

労働生産性を向上させるには作業方法や製造方法の改善を行う必要があり、そのためには、IEにおける方法研究(メソッドエンジニアリング)が有効であるということを生産マイスター検定で学びました。

生産管理の実践で活用するために、メソッドエンジニアリングの代表的な手法である①タイムスタディ、②ライン作業分析、③連合作業分析の3種類についてもういちど復習しておきましょう。

3-1. タイムスタディ

タイムスタディとは、現在の仕事を要素作業単位に分割して、作業時間を定量的に調査分析する手法です。作業時間を定量的に測定することは、すべての分析手法の基礎になります。

要素作業を区分するポイントは、①観測可能な大きさ、②主目的と付随目的で分ける、③作業者の作業と機械がやる作業を分ける、④目的が異なるものは分けることです。

作業方法改善の検討では、ECRS法、5W1H法、動作経済の原則を活用します。

3-2. ライン作業分析

ライン作業とは、1つの製品を作るために工程を分割し、一定のサイクルで次工程に半製品を送りながら生産する方式です。

ライン作業分析とは、ビッチダイアグラムの作成を通して、工程別の作業時間のアンバランスによって生じる編成ロス(手待ちロス)を定量的に調査・分析する手法です。

ライン作業の改善は、①作業改善による正味作業時間を短縮する、②稼働率を向上しTCT(目標サイクルタイム)を引き上げる、③作業分担の見直しをすることによって編成ロスを改善し、要因を削減するという3つのステップがあります。

3-3. 連合作業分析

連合作業分析とは、人と機械、2人以上の人が協同して行う作業の効率を高めるための分析手法です。

連合作業の改善は、①作業改善を行い正味作業時間を短縮する、②稼働率を向上しTCTを引き上げる、③作業分担・手順・タイミングを見直すことによって、編成ロスを改善し要因を削減するという3つのステップがあります。

生産管理に役立つ実践問題

1. ワークユニットとは何かを述べてみましょう。

2. タイムスタディの目的を3点述べてみましょう。

3. ライン作業分析の手順を5段階に分けて述べてみましょう。

4. 連合作業分析の実施手順を5段階に分けて述べてみましょう。

解答はこちら

web会員登録が必要です(無料)

4. 作業測定・ワークジャッジメント

生産性を向上させるためには、作業方法や製造方法の改善だけでなく、改善した作業方法を現場に定着させるためのパフォーマンス(実施効率)の改善と、そのためのパフォーマンスの測定・ロスの明確化などが重要であるということを、生産マイスター検定で学びました。

学習して覚えた内容を生産管理の現場で生かすために、総合パフォーマンスの測定方法や稼働ロス・作業パフォーマンスロスの測定方法・改善の考え方などについておさらいしていきましょう。

4-1. 作業測定における管理指標とロス

総合パフォーマンスとは、標準時間どおり作業できた場合の工数と就業工数との比率です。

稼働率とは、実際に作業した工数と就業工数(給料の支払い対象となっている工数)との比率です。

作業パフォーマンスとは、作業した工数と標準時間どおり作業ができた場合の工数との比率です。

総合パフォーマンス向上を妨げるロスには、①稼働ロス、②パフォーマンスロスの2つがあります。

4-2. 稼働ロスの測定方法

稼働分析には、連続観測法や瞬間観測法(ワークサンプリング法)、稼働計や日報の集計などの方法があります。

ワークサンプリングとは、人や機械の稼働状態および仕事の種類などを瞬間的に観測し、それらの積み重ねによって、各観測項目の時間構成や、その推移状況などを統計的に推測する手法です。

観測項目を設定するときには、基本機能の作業(付加価値を生む作業)、補助機能の作業(基本機能の作業に付随する作業)、不稼働(稼働できていない作業時間)に区分します。

4-3. 作業パフォーマンスの測定方法

標準時間とは、決められた標準作業方法を、熟練している作業者が、標準の作業速度で、1単位の作業を遂行するのに必要な時間です。

標準時間を活用した活動のためには、①標準時間を設定する、②組織を整備する、③実績測定とフィードバックを行う必要があります。

生産管理に役立つ実践問題

1. 下記の用語について説明してみましょう。

・総合パフォーマンス
・稼働率
・作業パフォーマンス

2. 標準時間とは何か、述べてみましょう。

解答はこちら

web会員登録が必要です(無料)

5. 設備生産性向上の進め方

設備を改善するうえで大切な「稼働していない時間を最小限にすること」について、生産マイスター検定で学習してきました。

生産管理の実践においても、設備が止まる原因を分析し、止まらないような改善ができるよう、ロスの改善手順などについておさらいしておきましょう。

5-1. なぜ設備生産性を向上させるのか

設備生産性も労働生産性と同様に、「産出量(アウトプット)/投入時間(インプット)」で考えます。

設備生産性を妨げるロスに、①故障ロス、②段取り・調整ロス、③チョコ停・空転ロス、④速度低下ロス、⑤不良・手直しロス、⑥立ち上がり・歩留りロスがあります。

5-2. 設備生産性向上の進め方

故障ロスの改善方法として、以下の7つの対策が必要です。

  1. 正しい手入れをする。
  2. 手入れの条件を守る。
  3. 正しい使用条件を守る。
  4. 修理者のレベルを上げる。
  5. 応急処置のみでなく、抜本的な対策をする。
  6. 故障に関する弱点を改善する。
  7. 故障から学ぶ。

段取調整ロスの改善方向として、シングル段取りの推進が有効です。シングル段取りの大切なポイントは、内段取り(機械を止めて行う段取り)を外段取り(機械を止めないで行う段取り)にできるように改善することです。

チョコ停・空転ロスの改善方向として、欠陥の微修正と最適条件の設定が有効です。

速度低下ロスの改善方向として、品質・機械トラブルを改善し、スピードを調整することが有効です。

不良・手直しロスと立ち上がり・歩留りロスの改善方向として、現象を見極め、要因を見直し、あきらめずに分析と対策をすることが有効です。

生産管理に役立つ実践問題

1. 故障ロスに対する7つの対策を述べてみましょう。

2. チョコ停ロスに対する3つの対策を述べてみましょう。

3. 不良ロス改善の考え方を4つ述べてみましょう。

解答はこちら

web会員登録が必要です(無料)

さらなるランクアップのために

生産マイスター検定2級テキスト
生産マイスター検定2級

2級では、第一線監督者として活躍するために必要な生産の専門知識と人の動かし方を学ぶことができます。
活躍の場をさらに拡げるために、ぜひ挑戦をしてみてください。

詳細はこちら

生産マイスター検定概要
banner_all_1280_nav01.png

おすすめの書籍

マンガでやさしくわかる生産管理

漫画でわかる生産管理

人・材料・設備をムダなく活用する手法=生産管理を、このジャンルの第一人者である著者とマンガによって解説しています。

書籍の一覧・まとめ買いはこちら

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

人材育成をサポートする
すべては人材開発協会で。

お役立ち資料無料ダウンロード

web会員の方は資料を無料でダウンロードいただけます。

無料お問い合わせ

生産マイスターや人材育成に関するご質問などお気軽にお問い合わせを。