株式会社ANAケータリングサービス「基礎力をつける学びのしかけ」

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活用事例vol.2 株式会社ANAケータリングサービス 基礎力をつける学びのしかけ

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活用事例vol.2 株式会社ANAケータリングサービス 基礎力をつける学びのしかけ

あの手この手で意欲を喚起

改善に取り組むための
基礎力をつける学びのしかけ

全日本空輸(ANA)のインハウスケータリング会社として機内食の調製などを行うANAケータリングサービス。同社が数年前から進めているのが、全社的な改善活動と、それを支える従業員の育成だ。取り組みを行う根底には、「自ら改善に取り組むことで、仕事の面白さを感じてほしい」という “しかけづくりマイスター”たちの思いがある。
(2019年3月29日発行・広報誌「生産マイスターVol.2」より抜粋)
【写真】ANAファーストクラスで提供している洋食の一例

製造工程(左)も物流(右)も、全社が一体となって改善活動を実施

(左)多様なメニューに対応するため、機械は使わずに人の手で盛りつけを行う
(右)品質安定の要となる冷蔵庫の中。庫外の作業時間は45分までのルールのもと、効率的な作業を実現するため、絶妙な配置がされている

食品メーカーの中でも、効率化の難しい独特な業態

同社は、ANA の国際線定期便就航を受け、1989年に創業。ANAの国際線・国内線のみならず、国内外の多数の航空会社の業務を受託している。

機内食の大きな特色は、少量多品種であること。便によってもメニューが異なり、アレルギーなどへの配慮も求められる。しかも、同社の機内食は保存料が入っていないため、冷蔵庫から出して作業できる時間は1回45分までというルールがある。

また、機内食の他に機用品と呼ばれる3,000アイテムに及ぶサービス用品の搭降載も手掛けている。便ごとにカートへセットし、間違いなく納める。
取締役総務部長の鈴木 秀樹氏は、「ものづくりと運ぶことの両方が分かっていないと、効率的な仕事はできません」と説明する。快適な空の旅の背後には、同社のたゆまぬ努力がある。

通信教育の推奨コースに「生産マイスター」を採用

インタビューに応じる鈴木氏

取締役 総務部長
鈴木 秀樹氏

改善活動に力を入れる背景には、鈴木氏の問題意識がある。

「私はメーカー出身ですが、初めて当社の工場を見た時、過去からの手法を踏襲した作業が多く、いろいろと思うところがありました」

改善提案制度は、提案件数こそ多いものの、本格的な改善は少ない状況だった。鈴木氏は、「改善を考えるに当たっての基礎知識が不足している」と感じた。
そこで、基礎知識を学ぶことのできる教材を探した結果、「生産マイスター」などの通信教育にたどり着き、2014 年度から、推奨コースに採用した。

「テキストを見て、これならいけると思いました。リーダーの役割なども含め幅広く学べる点がよいですね。これなら、改善に取り組むための“共通の教科書”になると考えました」(鈴木氏)
あわせて、通信教育の費用補助も拡充した。初年度は特別に1人当たり年5万円とし、今でも年3万円を補助する。

人事制度の昇格要件とし、学習意欲を喚起

ただ、自己啓発の一環として推奨しただけでは、受講が思うように進まなかった。
そこで、2015年4月、人事制度の見直しに当たって、生産マイスターの各級の検定取得を昇格要件に加えた。対象は全社員。スタッフも調理人も皆が、“共通の教科書” で生産現場の基礎知識を身に付ければ、部署間の連携が進み、改善がレベルアップすると期待した。

昇格要件にした効果はてきめんで、今では、全社で年間250人程度が検定を受けるようになった。
また導入に先立ち、鈴木氏は、自ら生産マイスターの検定試験を受検。ベーシック級、3級、2級に合格した。
「自分で受け、『そんなに難しくないよ。私も受かったから大丈夫だよ』と言い切れないと、誰もついてきません。」

学んだ知識が実際の活動に活かされる

インタビューに応じる谷口氏

業務推進部 生産管理課課長
谷口 学氏

専門家による指導も必要と考え、2014年10月より、トヨタ生産方式のコンサルタントを入れ、「A-LINEʼS 活動」と呼ぶプロジェクト活動を始めた。生産部門の各部署から中堅社員約30人を選抜し、改善と5Sとに担当を分け、課題解決に取り組んでいる。

「プロジェクトでは、毎年半数のメンバーを入れ替えますが、生産マイスターの知識が根づいたことで、新メンバーと既存メンバーのレベル感がある程度そろったところからスタートできます。」
改善活動全体を統括する業務推進部生産管理課課長の谷口 学氏は、こう振り返る。

インタビューに応じる石川氏

川崎工場
ファクトリーコントロール室
ファクトリーコントロール課
アシスタントマネージャー
石川 学氏

3年前から川崎工場のプロジェクト活動で事務局を担当する、川崎工場ファクトリーコントロール室ファクトリーコントロール課アシスタントマネージャーの石川 学氏も、「集まってくるメンバーの知識の幅が広がってきたのを肌で感じます。生産マイスターで学んだことを活かしてプロジェクトを進めています」という。

現在取り組んでいるのは、工場の生産方式の見直し(セル生産方式の導入)と、各課のリードタイム短縮・スペース有効活用だ。プロジェクトに集まるメンバーは、皆、モチベーションが高い。そこを支えているのが、生産マイスターで学んだ基礎知識である。

自ら学び、実践し、仕事の面白さを感じてほしい

さらに、学びを実際の仕事をつなげるために標準作業手順書の作成などを進めている。昨年度は、5Sマニュアルの見直しを行った。社員の成長を促し、生産性の向上を図る同社の取り組みはこれからも続く。

「しくみをつくって自然と勉強するように持っていくことを心がけています。言われたことを言われたとおりにやるだけでは、つまらないじゃないですか。自ら改善に取り組むことで、仕事って面白いなと感じてほしい。これからも、自ら考え行動する人材を育てていきます」(鈴木氏)

この、“しかけづくりマイスター”たちの情熱によって、社員の個々の学びが全社的な改善のしくみの構築・発展につながっている。

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製造だけではなく、全ての職場で改善が行われている。機用品をセッティングするラインでは、スペースの有効活用が進んでいる

株式会社ANAケータリングサービス

ANAファーストクラスで提供している和食の一例

ANAファーストクラスで提供している和食の一例

1989年の創業以来ANAのインハウスケータリング会社として、羽田空港と成田空港を拠点に、「安全」「安心」はもとより「食の感動」を送り届けることを経営ビジョンに掲げ、 ANAグループ唯一のものづくりの会社として高品質な機内食を提供している。それと併せ、海外発ANA便における機内食品質向上のためにも、和食食材の送り込みや現地ケータラーヘの調理指導も行うことにより、SKYTRAX社による「5スター」評価を6年連続で獲得する一翼を担っている。また、外国航空会社への機内食提供やラウンジ事業に加え、食品販売などの新たな事業領域へも挑戦している。
売上高:240億円(2017年実績)
従業員数:1,280人(2018年4月)

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